ほおずきれいこの骨髄ブログ・2nd season

ドナー登録から骨髄提供までの体験を綴った主婦ブログ。一人でも多くの患者さんの命が救われますように。

【小説】第5話 ミスターM氏の帰還・前編 | Hatena Blogger 銀河鉄道の夜

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第4話の続きの話になります。

登場人物

機関士・・・行入(ゆきいり)男

車掌 ・・・桔梗(ききょう)女

乗客 ・・・ミスターM氏

 

第5話 ミスターM氏の帰還・前編

 

ジョバンニ号の出発時刻まであと1分にせまっていた。

ミスターM氏はこない。

東京駅最深部にある銀河鉄道のプラットホームで車掌の桔梗は待っていた。

またか――桔梗は思った。

ミスターM氏にはジョバンニ号の調整に狂いが生じたと説明したが、実際はなぜそのようなことが発生しているか、解明されていなかった。

 

「あなたが行きたい過去に行く~銀河鉄道1泊2日の旅~」は、度々、参加者の時間軸がずれ、地球到着時に年をとってしまうことがあり、そのたびに桔梗は参加者にID時計を渡し、再乗車をお願いしていたのだが、下車したきり行方が分からなくなってしまう者もたまにいるのだ。

30歳のミスターM氏は地球に到着したとき、時間軸がずれ70歳の老人に変貌してしまった。このような現象は、再乗車することによって解決してきた。

地球に到着したジョバンニ号は1時間停車し、車内の点検、清掃をした後、また新たな旅に出る。実際は点検、清掃は自動で行われ15分とかからないのだが、社内規定で機関士と車掌の休憩を45分間とらないといけないことになっているので1時間停車するのだ。

 

ミスターM氏以外の乗客はすでにジョバンニ号に乗車が終わり、出発を待っている。

しかたない、出発時間だから。

そのとき、桔梗の脳内に機関士行入から連絡がはいった。

脳内に埋め込まれたICチップで、行入とは声をださずに脳内で会話ができる。

(今すぐ機関室に来てくれ)

(もうすぐ出発時間ですよ)

(緊急事態だ。出発は遅らせる。上からの命令だ)

桔梗はプラットホームを小走りし、先頭車両に向かった。

――一体何?

桔梗が機関室に着くと、行入はさっそくとばかり

「これを見てくれ」といって壁の大型モニターに目をむけた。

「あの件の報告書が本部から届いた」

あの件とは、「あなたが行きたい過去に行く~銀河鉄道1泊2日の旅~」の参加者が行方不明となる件だ。

モニターに映し出された報告書を桔梗は脳内にダウンロードした。

報告書には要約するとこう書かれていた。

 

参加者の1割が行方不明となっている事実。

家族により被害者の会が発足され、訴えられている。

時間軸が狂った参加者は、急激な老化に脳が耐えられず、まだら痴ほう症を高い確率で発症、指示通りジョバンニ号に乗れないという事象を引き起こしている。

過去から何かを持ち帰っていて、それを所持していることにより、時間軸が狂う可能性あり。

その持ち帰った何かの作用によりどこかへ誘導されている可能性がある。

再発は絶対に起こしてはいけない。

行方不明者をただちに捜索すること。

 

「桔梗、ミスターM氏はまだ乗車していなかったな」

予約者の乗車状況は機関室でわかるようになっている。

「なんとしても探すのだ」

「私が、ですか」

嫌そうな顔をする桔梗。

「ミスターM氏が見つかるまで出発するなとの上からの命令だ」

「わかりました。いま居場所をしらべてみます。ミスターM氏がIDウォッチをはずしていなければ、すぐわかります」

桔梗が機関室のパソコンを操作すると、モニターにミスターM氏の現在地が表示された。桔梗がミスターM氏に渡したIDウォッチにはGPSが内臓されている。

奄美大島にいますね。ここからだと10分ぐらいですね」

東京駅で次世代飛行装置に乗車すると奄美大島まで10分で行ける。

「おそらく、ミスターM氏は次世代飛行装置に乗ったのでしょう」

「なぜ、奄美大島に?」行入は言った。

「おそらくですが、ミスターM氏があの星から持ち帰った何かに関係すると思われます。調べてみましょう」

ミスターM氏が例の星に降り立ったときの唯一の持ち物IDウォッチには、カメラ機能があり、逐次ジョバンニ号のコンピューターに送信されるようになっていた。

桔梗がパソコンを操作すると、モニターにはミスターM氏が見てきた景色が映し出された。

「ミスターM氏、女の子に会いにいっていますね」

「かわいい子だな」行入は言った。

 

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行入と桔梗はモニターに映る女の子を見ている。

少年になったミスターM氏は女の子と話をしているらしい。

少年の姿は映っていないが、会話は聞き取れる。

「名前をおしえてください」

女の子は少年の耳元で名前をささやいたようだ。

 

「ハンカチを受け取っていましたね。ピンクの。その持ち帰ったものをもとに戻すよう、奄美大島に自然に導かれたのだと思われます。残念ながら、女の子の名前は聞き取れませんでしたが、映像があれば探せます。この女の子、現在は32歳になっているはずです。変換してみます」

桔梗は、カチカチとパソコンのキーボードをたたいた。

「こんな感じになっているはずです」

 

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桔梗はこの女性のデジタルデータを脳内にダウンロードした。

「この女性にハンカチを返して、ミスターM氏を連れて帰ります」

桔梗は機関室をあとにした。

 

後編に続く

 

 ※この物語はフィクションです。写真の女性も実在しない人物のものを使っています。

 

Hatena Blogger 銀河鉄道の夜 総目次 - へのへのもへじ・破

 

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