今日は関東地方は雨です。
豪雨でも家の中まで雨音が聞こえないので、出掛けるときびっくりするときがあります。
第8話のつづきです
第9話・ミスターM氏の追憶①
「きゃあ~~~~~~~~」
早朝のコーヒーショップの店内に女性店員の声が響いた。
いっせいに声の出どころを探す客たち。
視線が女性店員に集まる。
店員は、すらっとした美しい女性だ。
時間が止まったかのように、立ち尽くしている。
店長があわてて女性店員にかけよった。
「失礼しました。なんでもないです。」
と客にむかって一礼する。
「きみ、ちょっときて」
女性店員の腕をひっぱると、店の奥に連れて行く。
「きみ、あんな声だして」
「申し訳ございません、びっくりしちゃって・・・」
「あの席、早く片づけてきて」
☆☆☆☆☆☆
いつもの席にいつもの老女が座っている。
老女の夫は1年前、癌の宣告をうけた。
ステージ4の末期がんであった。
老女の夫の癌は手術で切除できるものではなかった。
すでに転移もしていて、余命三か月と宣告された。
「ぼくは、このまま死ぬのはいやだ。動けるうちに、やりたいことがある。すぐに戻ってくるから」
そういって、老女の夫は老女をのこしてジョバンニ号に乗った。
黄金の銀杏が輝く10月のことだった。
それから老女は一日も欠かさず、このコーヒーショップで夫の帰りを待っている。
ジョバンニ号に乗っている間は体の老化は遅くなる。
癌の進行もゆるやかになる。
日本人の平均寿命は女性102歳、男性93歳であったから、平均寿命まで生きれば、ふたりの時間はあと10年以上あったはずだった。体の半分以上を人造の義躯に置き換える手術はまだ地球では認められておらず、地球外の技術の高い星で受けなければならない。その手術を受けるために老女の夫はジョバンニ号に乗ったのだった。
☆☆☆☆☆☆
女性店員は、老女が飲んでいたコーヒーカップを片づけながら、
さっき、突然の出来事に大きな声を出してしまったことを反省していた。
一年前ほど前から、このコーヒー店の決まった席で待ち人を待っている老女がいた。
年は80歳ぐらいだろうか。6時30分に到着するジョバンニ号で帰ってくる夫を待っているときいたことがあった。名前はほおずきれいこときいていた。
今日は6時30分を過ぎても、老女が席をたつことはなかった。
それで、老女の異変に気付いた。
――さっきから動いていない。眠っているようにも見えるが・・・
「ほおずき様――」
――笑っている?
近寄って、だらんと下にたれた腕にふれると、
老女は、まるで砂のように崩れ、さらさらの非常に細かい粒子となって、きらきらと光りを集めながら、リノリウムの床に吸い込まれていった。
老女の飲み終えたコーヒーカップと色あせたピンクのハンカチが残されていた。
すべての物質は粒子からできている。ほおずきれいこは粒子になってどこかへ消えた。
☆☆☆☆☆☆
翌日。
早朝6時30分。
コーヒーショップに現れた男がいた。
「この女性を知りませんか。この人を探しています」
女性店員は答えた。
「ほおずきれいこさんです。昨日までこの店に来ていました。昨日までは――」
ーつづくー
※この物語はフィクションです。写真の女性も実在しない人物のものを使っています。
あとがき
このお話のつづき、まったくなんにも考えていません。
現れた男が夫なのか、別の男なのか、あるいは機関士・行入なのか、そうそう、はなればなれになったという弟というのもいました。(第4話)
【小説】Hatena Blogger 銀河鉄道の夜 第4話 - ほおずきれいこの骨髄ブログ・2nd season
なにも決まっていません。
第8話で、女性店員が「きゃあ~」と言っていたので、よほどなにか大変なことがおこっているに違いないと思い、想像しました。
だって、老衰で死んでるぐらいで、そんなに驚く? 血が出てるなら驚くけどって勝手な解釈でほおずきれいこが死んでないかもしれないってことにしちゃいました。
異世界にいったかもしれないし。
それと、せっかくだから、アプリで作った老婆のほおずきれいこの写真を使いたいと思ってお話をつくりました。
だれか、続きをお願いします。
続き書きました。
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Hatena Blogger 銀河鉄道の夜 総目次 - へのへのもへじ・破
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