「イワンのばか」(作 トルストイ)を読んだ。
ばかのイワンはロシア民話に出てくるキャラクター。ばかみたいにがむしゃらに働く純朴な男。そのイワンのお話をトルストイが書いた。
それが「イワンのばか」。
なんとなくストーリーは聞いたことがあると思う。簡素化されて絵本になったりしているかもしれない。しかし、ちゃんと読んでいる人はどれだけいるだろう。
トルストイはロシアの作家で、「戦争と平和」「アンナ・カレーニナ」が有名だ。恥ずかしながら、そのどちらも読んだことがない。トルストイに限らず、ロシア文学というものを読んだことがない。もちろん、ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」も読んだことがない。カタカナの名前が難しそうというイメージ。それに、長そうだし、読むのに何日も費やしそう。そうやって敬遠してきた。ただの食わず嫌いなのかもしれないが。
さて、読んでみようと思って、auブックパスで電子書籍を探していると、「イワンのばか」が無料であった。無料に弱い私。それに一晩で読めそう。
読み始めると、悪魔とか出てくるし、登場人物も少ないし、名前も難しくない。
主な登場人物は
- 主人公イワン
- イワンの兄1
- イワンの兄2
- イワンの妹
- 大悪魔
- 大悪魔の部下の小悪魔1
- 大悪魔の部下の小悪魔2
- 大悪魔の部下の小悪魔3
小悪魔たちがイワンの畑仕事を邪魔してもイワンはおかしいと思いつつ畑仕事をやめなかった。ついには小悪魔を捕まえるが、逃がしてやる。そのとき小悪魔からもらった魔法のグッズが後に役に立つ。病気を治す木の根のおかげで王様の娘の病気を治し、婿になりのちに王様になる。イワンの国の法律では、働いて手に胼胝(たこ)がある者だけ、食べる権利があった。だからイワンの妻も自ら畑仕事を行った。
イワンの国の民はばかのイワンのように手をつかって畑仕事をする民ばかりになった。
小悪魔3人を倒された大悪魔が人間に化けてイワンの国へくる。大悪魔は商人でお金をたくさん持っていたが、衣食住なにひとつ手に入らない。
なぜなら、イワンの国の民はお金がいらないからだった。
ほしいのは労働力なのだ。
お金はいらない、あなたは何ができますか?
ということなのだ。
大悪魔は「手で働くより、頭を使って働けば楽をして儲けることができる」と高い塔の上で演説するが、誰も相手にしない。そのうち空腹で力尽き階段に頭をぶつけながら落ちていく。
それを見た民とイワンは、頭を使って働くとはこういうことなのか? と思う。
この作品は1885年に書かれ、1886年に発表された。
そんな昔なのに、なんだか今の世の中を皮肉っているような気がする。
お金を持っている者が強い世の中。会社は株主のいいなり。金を持っている者がお金を増やすことができ、汗水流して働く者は働いても働いてもお金は増えない・・・
金を持っている会社は安い賃金で外注に出し、安い賃金で請け負った会社は安い賃金で働いてくれる派遣を使う。
金を右から左へ動かすことができる人が金持ちになれる・・・それを頭で働くというのだろうけど、お金がいくらあっても食べ物と交換できなければ生活はできない。結局、生きるためには食べなければならないし、農業、漁業、畜産業など体を使って働いている人がいるからこそ、生きていける。
いきなり規模の小さい話になるが、家事などは労働力が欲しい時がある。お金がふんだんにあれば、家政婦さんを雇えばよいが、そんなお金はない。扶養してやってるんだから、しんどかろうが、病気だろうが関係ない、家事やるのは契約・・・?
そうではない。欲しいのはお金じゃなくて、少しの労働力。
「イワンのばか」に話をもどすと、労働力が欲しい者にとって、お金をちらつかせても無駄だったということ。
体が資本になるような仕事は、健康な体さえあればだれでもお金持ちになれる、それぐらいの賃金もらってもいいのでは。
それよりなにより、体を動かして働く者がもっと尊敬されるような世の中になったらいいのにと思う。「イワンのばか」では、ばか扱いでしたが、実際の世の中も似ていると思う。
あらすじ(ウィキペディアより)
昔ある国に、軍人のセミョーン、たいこ腹のタラース、ばかのイワンと、彼らの妹で啞(おし)のマルタの4兄弟がいた。
ある日、都会へ出ていた兄たちが実家に戻ってきて「生活に金がかかって困っているので、財産を分けてほしい」と父親に言った。彼らの親不孝ぶりに憤慨している父親がイワンにそのことを言うと、ばかのイワンは「どうぞ、みんな二人に分けてお上げなさい」というので父親はその通りにした。
3人の間に諍いが起きるとねらっていた悪魔は何も起こらなかったのに腹を立て、3匹の小悪魔を使って、3人の兄弟にちょっかいを出す。権力欲の権化であるセミョーンと金銭欲の象徴のようなタラースは小悪魔たちに酷い目に合わされるが、ばかのイワンだけは、いくら悪魔が痛めても屈服せず、小悪魔たちを捕まえてしまう。小悪魔たちは、一振りすると兵隊がいくらでも出る魔法の穂や揉むと金貨がいくらでも出る魔法の葉、どんな病気にも効く木の根を出して助けを求める。イワンが小悪魔を逃がしてやるとき、「イエス様がお前にお恵みをくださるように」と言ったので、それ以来、小悪魔は地中深く入り、二度と出てこなかった。
イワンは手に入れた宝で、兵隊には踊らせたり唄わせたりして楽しみ、金貨は女や子供にアクセサリーや玩具として与えてしまう。無一文になった兄たちがイワンの所にかえってくると、イワンは喜んで養ってやったが、兄嫁たちには「こんな百姓家には住めない」と言われるので、イワンは兄たちの住む小屋を造った。兄たちはイワンが持っている兵隊や金貨を見て「それがあれば今までの失敗を取り戻せる」と考え、イワンは兄たちに要求されて兵隊や金貨を渡してやる。兄たちはそれを元手にして、やがて王様になった。
イワンは住んでいる国の王女が難病になったとき、小悪魔からもらった木の根で助けたので、王女の婿になって王様になった。しかし「体を動かさないのは性に合わない」ので、ただ人民の先頭に立って以前と同じく畑仕事をした。イワンの妻は夫を愛していたので、マルタに畑仕事を習って夫を手伝うようになった。手に胼胝のないものは、そのお余りを食べよ」と言うことだけだった。
ある日、小悪魔を倒された大悪魔は、人間に化けて兄弟たちの所にやってくる。セミョーンは将軍に化けた悪魔に騙されて戦争をして、タラースは商人に化けた悪魔に騙されて財産を巻き上げられて、再び無一文になる。最後に大悪魔はイワンを破滅させるために将軍に化けて軍隊を持つように仕向けるが、イワンの国では人民は皆ばかで、ただ働くだけなので悪魔に騙されない。今度は商人に化けて金貨をばらまくが、イワンの国ではみんな衣食住は満ち足りており、金を見ても誰も欲しがらない。そればかりか、悪魔は金で家を建てることができず、食べ物を買えないので残り物しか食べられず、逆に困窮して行く。
しまいに悪魔は「手で働くより、頭を使って働けば楽をして儲けることができる」と王や人民に演説するが、誰も悪魔を相手にしなかった。その日も悪魔は、高い櫓の上で、頭で働くことの意義を演説していたが、とうとう力尽きて、頭でとんとんと梯子を一段一段たたきながら地上に落ちた。ばかのイワンはそれを見て、「頭で働くとは、このことか。これでは頭に胼胝よりも大きな瘤ができるだろう。どんな仕事ができたか、見てやろう」と悪魔の所にやってくるが、ただ地が裂けて、悪魔は穴に吸い込まれてしまっただけだった。
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