真夏のある日のことでした。殺生をしてしまいました。
私の職場は木に囲まれていて隙間だらけのプレハブ2階建て。ドアの隙間からダンゴムシやクモ、ヤスデが入り込んできます。私はそっと彼らをちり取りと箒で捕まえては、外に逃がしてやります。
でも、蚊とGだけは許しません。蚊はかまれるとかゆいし、退治しないと被害者が続出するし、Gは不潔の代名詞のようで子供を預かる施設にとっては存在が許されません。
その日は土曜日でした。なんと、その日は利用者がゼロ。近隣の学童保育施設でコロナ感染者が出たりして、利用をやむを得ない場合に限っていることと、親も夏休みということもあり、児童は来ませんでした。土曜日の利用者はもともと少ないです。
朝から来なくとも、昼から来る場合もあり、電話や各種申込みなどは受け付けているので、閉室して帰るわけにはいきません。そういう日は掃除・除菌三昧になります。
同い年の同僚Aさんとふたりで、窓を拭いたり、カーテンの洗濯をしたりしていました。
Aさんが床掃除をしていて部屋のすみのゴミ箱をどかした時でした。かくれていたGがササササっと出てきました。
ゴキブリ!!
と叫んだかどうかは覚えていませんが、めちゃんこ驚きました。
ササササ、ピタッ、ササササ、ピタッとGも動き回ります。
私は、Gを見失わないように横目で見ながら古新聞をとりに行きました。工作の時に机に敷いたりする程度の古新聞が置いてあります。
そしてありったけの古新聞を丸めると、ササササ、ピタッと動くGがピタッとなった瞬間に、
「イヤアアアアァァーッ」と居合切りのごとく新聞紙の剣を振り下ろしました。
一撃で仕留めたいという思いから思わず声がでました。ちゃんと力を入れて叩かないと、新聞紙をどけたとたんに出てきたら怖いです。
Gは逃げた様子はありません。
たぶん、だいじょうぶ、だけど私は怖くて新聞紙をどけることができません。同僚のAさんは私より虫が大丈夫な人で、その後の処理をしてくれました。しっかりと潰れていたそうです。Gも一瞬で命を落としたので苦しまずにすんだことでしょう。
掃除も終わり、カーテンの洗濯も終わり、カーテンをレールにつけ、閉室時間になりました。
閉室時は防犯のためにカーテンはすべて開けておきます。でも、カーテンがまだ乾いていないのでどうしようかなと逡巡してそのままにしておいたら、帰る前にAさんがカーテンをすべて開け、カーテンをとめる布(タッセル?でいいのかな)で全部とめてくれました。
全部・・・
たしかに全部とめました
なのに月曜日の朝、午後出勤したら、カーテンが一か所とまってなくて、とめる布がないと午前出勤のスタッフに言われたのです。
そんなはずはない、と思ったけど、実際になくて、洗濯機の近くに落ちてないか探しました。探しましたがありません。
不気味だな、気持ち悪いなと思いつつ、三日後、Aさんが出勤の日、カーテンのタッセルは出てきました。洗濯機の近くに落ちていたのをAさんが発見しました。
でも、Aさんもたしかに全部とめて帰ったと言うのです。逆にほかのところをとめて一か所なかったら、ひとつないけどどこいった?ってことになりますから、問題なく全部とめて帰ったのです。
そして、みんなが探してもなかったカーテンのタッセルがいきなり出てきました。
これをGの呪いと言わずしてなんと言えばよいのでしょう。
なくなったタッセルの場所はまさに私がGを抹殺した一番近くです。
Gの幽霊がいたずらをしたのです。
そうでなければ、亡くなったGの遺族が、Gが命を落とした場所でGの死を悼み、そのあと、遺族総動員で一番近くのタッセルをとりはずし、運び、どこかへ隠し、三日後にまた洗濯機の近くに持ってきたのかもしれません。それで人間を十分びびらすことができます。
そうだとしたら、なんという知能の発達!そっちのほうが恐いわ!
なんとも説明がつかない不思議な出来事でした。
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