なかなかすすみません、銀河鉄道の夜。
ミスターM氏のお話がさきにすすんじゃって。
このお話の続きはこちらです。すごく面白いです。
SFファン必見。
で、やっと書きました。銀河鉄道のお話第4話。
ちょとずつ書いてはいたんですが、そんなに面白くない。
続きに期待しましょう。
Hatena Blogger 銀河鉄道の夜 総目次 - へのへのもへじ・破
第4話・あなたが行きたい過去にいく~銀河鉄道1泊2日の旅・最少催行人数1名~
男はデッキに立ち車窓の外を流れる宝石をちりばめたようなキラキラとした川を眺めていた。列車は川に沿って走っていた。
川の中には地球では見たことないような、色とりどりの大きな美しい花がたくさん咲いている。列車は減速している。
もうすぐ目的地に着くはずだ。この川の向こうに過去がある。
男は荷物を持っていない。荷物はすべてコンパートメントに置いてきた。
持ち物はID時計ひとつ。
「もうすぐ着きます」
桔梗は男に声をかけた。そして続けて言った。
「ここでの停車は1時間です。
汽車は1時間後に出発します。
もし、乗り遅れたら、あなたは永遠に戻れないかも知れません。
乗り遅れたら、この世界で、あなたは人生をやり直すのです。
どうがんばっても過去は変えられません。いままでのあなたの軌跡をたどるだけです。
そして、あなたは、この銀河鉄道に乗る日まで同じ人生を繰り返すのです。
それに耐えられず、自殺しようとする人もいますが、自殺も許されません。
いじめられた経験がある人は、またその苦しみを受けるのです。
闘病していた人は、また辛い治療を受けるのです。
でも、未来はあなた次第で変えられます。
未来はまだ決まっていませんから。
必ず戻ってきて下さい。
幸運を祈ります」
まもなく汽車はホームに到着して、ドアが開いた。
男はホームに下り立つと、桔梗に教えられたとおりすすみ、キラキラした川に架かったガラスでできたような橋の袂にたどり着いた。橋の向こうは銀河である。ほんとうにそこに男が行きたい過去があるのだろうか。男のほかに下車する者はいなかった。
☆☆☆☆☆☆
ぼくがひとりで公園のブランコに乗っていたら、かわいいお姉さんもやってきて、ぼくのとなりのブランコに乗った。中学生ぐらいのお姉さんだった。
お姉さんはブランコをブンブンこいで、空に投げ出されそうなぐらい高くあがっていた。
そうかと思うと、今度はまったくこぐのをやめて、自然にまかす。
見たことのない子だった。同じ小学校出身じゃないなと思った。
突然、空が暗くなり夕立がきた。
あっというまにぼくたちはびしょ濡れになった。
ぼくとお姉さんは、土管の中に避難した。
ぼくは、お姉さんと隣り合って座った。お姉さんはたぶん泣いていた。
お姉さんの顔を見ると、雨なのか涙なのかわからないぐらいびしょ濡れだった。
雨に濡れたから、泣いてもわからないと思って涙が自分勝手に出てきたのかもしれない。
ぼくはポケットから、ハンカチを出してお姉さんに渡した。しかし、ハンカチは雨でびしょ濡れだった。でも、お姉さんは、「ふふ、びしょ濡れ」と言ってハンカチを受け取ってくれて、涙を拭いた。そのあとお姉さんはぼくの手をいとおしそうに両手で撫でた。ぼくより少し大きい手はふんわりとして暖かい。
ぼくはドキドキした。
「明日も来れる? 同じ時間に」お姉さんは言った。
「うん」ぼくは返事をした。
「明日、ハンカチ洗って返すから」
☆☆☆☆☆☆
それきり男は、お姉さんに会っていない。
公園には行けなかったのだ。男が10歳のときだから、20年経つ。
もはや、夢なのではないかと思うときがある。
男が結婚できない理由。
それは、初恋が忘れられないからだと最近気づいた。
いつかきっと出会える、本当に愛する人に。
そう信じて、たくさんの女性と付き合った。
3年付き合った彼女もいた。彼女を愛しているつもりだった。
でも、それは本当の愛ではなかったようだ。
男との結婚を彼女が考えていると知ったとき、男は急激に冷めた。
男が彼女に真剣になれなかったのは、自分の中にあの人がいたからだったかも知れない。
男が彼女とやっていたのは恋人ごっこだった。最終的に男は彼女のことが、好きなのか、女性というものが好きなのか、わからなくなった。結果的に彼女を傷つけてしまった。
そして、男は過去に決別するために、銀河鉄道ジョバンニ号に乗った。
行けなかった約束の日に、お姉さんに会いにいくのだ。
お姉さんに会っていたら、どうなっていただろう。
なにもないかもしれない。それはそれでいい。
自分が前進するために必要なことだ。
そう思って、申しこんだこの旅行だった。
「あなたが行きたい過去にいく。銀河鉄道1泊2日の旅」
実際には車中で1ヵ月過ごす。約2週間かけて目的の星に行き、2週間で帰ってくる。
その間、地球時間では1日が経過する。だから、週末に気軽に出かけられるのだ。
そんな気軽な旅行なのに人気がないのは、過去は変えられないという大前提があるからだった。だから、過去の自分に、これから上がる株の銘柄を教えたり、ロト6の当選番号を教えたりはできない。過去の自分が存在しない過去に、過去の自分の姿で行くというのがこの旅行だった。
男が橋を渡りきると、そこは男が少年時代をすごした町だった。
目の前にあの公園がある。男は10歳の少年に戻っていた。
☆☆☆☆☆☆
ぼくが公園に着くと、お姉さんが待っていた。
「お父さんとね、お母さんが離婚するの。私は、あしたお母さんと引っ越すの。
弟はお父さんといっしょに暮すの。家族はバラバラになるの。」
それが、泣いていた理由だった。
「ハンカチ、ありがとう」
お姉さんはきれいにアイロンをかけたハンカチを返してくれた。
ぼくはハンカチを受け取った。
しかし、その瞬間何か得体のしれぬ違和感に襲われた。
見た目は少年ではあるが、中身は30の男である。
過去の自分はハンカチを返してもらっていない。だから、これは受け取れないのかもしれない、と察した。過去を変えるような行為は、自らしてはいけないと桔梗に言われていた。
「これは、あげます」ぼくは言った。
「じゃあ、私のハンカチ、あげる。交換しよ」
ぼくは、ピンクのハンカチを受け取った。
「お姉さんは何歳ですか? ぼくは10歳です」
少年は少年らしからぬことを言った。
中身は30の男である。
「12歳。中学1年生」
「名前を教えて下さい」
名前さえわかれば――、現在に戻ったとき探せるかも。
ぼくはそんなことを考えた。
お姉さんはぼくの耳元で名前を囁いた。
ぼくはそれをしっかりと覚えた。
お姉さんは言った。
「君の名は?」
ぼくは、自分の名前を言った。
このあと男は地球に戻ってお姉さんを探すつもりでいた。
男の手には、マイメロディのピンクのハンカチが握られていた。
ハンカチには名前が書いてあった。
――ほおずきれいこ、と。
ー完ー
完にしましたが、続きを書いていただいても結構です。
ほおずきれいこを登場させましたので、今後のお話で好き勝手使ってください。
このお話はフィクションです。ブログ主「ほおずきれいこ」とは関係がございません。
男の名前も決めていませんので、自分もこの物語に登場人物として参加したいと思われた方は、男の名前を自分の名前にしてお話を書いてもOKです。
自分を登場させれば、へのへのもへじ氏がイジってくれます。ブログの宣伝にもなりますよ~。人気者になること間違いなしですよ~。
さあ、レッツ トライ!
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