――神奈川県川崎市川崎区○丁目○番地に引きこもりが1名いる模様。急行せよ。
「了解」レッドが言った。
「いたぞ!引きこもりだ!」
5人の5色の防護服をきた隊員がある一軒家に突入する。5人のうち、ピンクとイエローは女性隊員のようだ。レッドとグリーンとブルーは男性か。
怯える引きこもりの男。
「安心しろ。俺らも元引きこもりだ。」ブルーの防護服を着た男が言った。
俺は、政府批判に便乗して炎上商法でブログやユーチューブで稼いで暮らしてきた引きこもり。本当は政治のことなんか、考えたこともない。被害妄想が強い、他人のあげ足とってわめいてる馬鹿どもからヒントをもらって生きてきた。
ある日、青い二頭身のまるっこいロボットが俺の前に現れた。
ドラえもんみたいなやつだ。未来から、俺の孫の孫、つまりやしゃごから派遣されてきたという。未来の俺のやしゃご、ろくな暮らしをしてないらしい。
ダメ人間のルーツを探るために派遣されたのが、このドラえもん型ロボットというわけだ。大人気アニメ、ドラえもんを参考に作られているのは一目瞭然だ。
このロボット、俺に説教しやがった。今すぐまともな職につけと進言してきた。
驚いたのは、俺が結婚して子供もできてたってこと。38で引きこもりの俺が結婚。結婚したから貧乏暮らしになったらしい。なんで結婚したかというと一度遊んだ女に子供ができちまって、しかたなく籍をいれたらしいのだ。
信じられない俺は、ドラえもん型ロボットを問い詰めた。
「証拠を見せろ」と。
ドラえもん型ロボットは渋々、お腹のポケットからタブレットを取り出し、動画を俺に見せた。
「これが、俺の嫁……?すげーブスじゃねえか。ふざけんなよ。しらねえよ、こんなやつ」
「だ、だから、これから出会って結婚するのです」
「嘘だろ……」
「だから、今こそ、引きこもり生活から脱出するのです」
「うるせーな……」
人は簡単には変われない。
今までだって、何度就職しようとしたことか。そのたびに挫折してきたんだ。俺は一生懸命やっているのに、なんか違うらしいんだ。
人は簡単には変われないんだよ……
「当然、道具もいろいろもってんだろ?」
「ないことはないですが……」
「そのポケット」
ポケットを押さえるドラえもん型ロボット。
「もしもボックスとかないのかよ」
「あります……」
俺はいいことを考え付いた。
「俺が変わるんじゃない。世界が変わればいい。」
「もしも、引きこもりがヒーローになる世界になったら」
ほどなくして、新型コロナウィルスというウィルスが世界中に蔓延し、人々はばたばたと死んでいった。両親もコロナで死んだ。俺は引きこもりで、ほとんど自分の部屋から出ていなかったので、感染せずにすんだ。
葬式も出来ず、1週間後に骨壷に入った骨が送られてきた。
さて、この世界。青い二頭身のあいつがいないから、元に戻すこともできない。
こんな世界になったのは俺が引きこもりがヒーローになる世界になったらと言ってしまったからなのだ。
今日も俺は、防護服を来てコロナマンブルーとして、引きこもりを探す仕事をしている。
わずかな生き残りの人間を探して保護する、それがコロナマンの仕事。
小説家になろうサイトにも小説を投稿しています
「TOKYOオリンピックを3カ月後に控えた20XX年」
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